基本合意いる? いらない?
2021年9月6日M&Aでは、最終的な譲渡契約締結の前に基本合意書を締結するケースがあります。
それは、譲渡金額や譲渡時期など主だった条件が固まった段階において、その内容について文章にしたうえで買い手と売り手の両者が確認することを目的として行われます。
●基本合意を無視したケース
以前私がお手伝いしていた案件で、売主側から基本合意の締結を求められたミーティングの席上にて、買主側の専務さんが「これまで何十件もM&Aをやってきたけれども、基本合意を締結したのはたった一回だけ」と自慢げに話されたことがありました。
一瞬その場は凍り付いたものの、その場では基本合意について結論は出さずに終わり、その後、売主側が折れてくれたため基本合意なしで進んだのですが、売主側に不信感が生じ、(そのあとも様々なトラブルが続きましたが)最終的に破談となってしまいました。。。
●基本合意の目的
基本合意を締結する大きな目的のひとつは、売主側が売却への意思を固めていく点にあります。(買主側にとっても基本合意締結すべきケースもあるのですが、その話はまた別の機会に)口頭だけではなく文章でも合意内容を確認することによって、両者の合意内容を確かめながら進めていくのです。
逆に言えば基本合意締結を拒否するということは、”口頭での条件が当てにならない”と言っているようなものです。
先の専務さんは相手にとっての重要な目的を面前で無視した発言をしてしまったという自覚もなかったと思います。(交渉の節目で失礼にあたらないようにと、ご挨拶のために出席されたはずだったのですが・・・)
買主側からみて何十件もある案件のうちのひとつだったのかもしれませんが、売主側から見れば一生に一度あるかないかの人生をかけた決断ですので、規模の大小にかかわらず、少なくとも売主側から求められたケースには誠意を見せるべき場面だったと言えると思います。
「規模か小さいから基本合意は要らない」とタカをくくっていると足元をすくわれますし、売主側からみた場合には、買主側の本性を見極めるポイントのひとつともいえるでしょう。
株式会社M&Aコンサルティング
代表取締役/公認会計士 髙野 健二
BIG4メンバーファーム(現・新日本有限責任監査法人)で上場企業グループ等の会計監査、株式公開準備、買収監査(デューデリジェンス)、株価評価等のプロジェクトに参画。
その後、東証一部上場の専門商社やJASDAQ上場流通企業などのM&A担当・役員・顧問として、企業戦略立案・遂行の最前線で活躍した経験を持つ。
【主な役職】
ゲンダイエージェンシー株式会社(JASDAQ上場) 監査役(現任)、日本公認会計士協会東京会経営委員会委員長(2009年度、同委員会副委員長(2010年度)および同会M&A業務支援プロジェクトチーム構成員長、株式会社ノジマ執行役経営戦略グループ長(2007.6~2008.6)、東京都事業引継ぎ支援センター登録民間支援機関(現任)
イノベーションズアイより許可を得て転載
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